JAL NY支局勤務の内藤仁美さんに聞く「せかいを舞台に働くということ」【後編】
公開が遅れてしまいました🥺
「せかいと繋がる仕事」インタビュー第3弾では、
パイロット志望で飛行機オタクのレンと、将来は海外で働きたいサワが、
日本航空(JAL)NY支局にご勤務されている内藤仁美さんにお話を伺いました。
※注意事項※
コロナ禍前に撮影されたお写真を含みます。
インタビュー実施は2020年秋です。その後、コロナの状況などに応じて、働き方やお仕事内容に変更が生じている可能性があります。
前半に続いてJALニューヨーク支局勤務の内藤さんに行ったインタビューです。前半を読んでない人は下のURLにレッツゴー!
後編では内藤さんにニューヨークで働く上で日本と異なる点を中心にお話しいただきました。
新しい発見があるかも☺
ー仕事する上で、ニューヨークと日本ではどのようなところが違いますか?
内藤さん(以下、内):
いい質問ですね。
日本本社とニューヨーク支店の大きな違いは、意思決定のスピードです。日本本社だと、1つのプロジェクトに多くの部署が関わる、大型のプロジェクトが多いため、さまざまな部署の人が集まって何回も会議をします。特に、長期間の大型のプロジェクトですと慎重な判断が求められますので、何度も議論を重ねて全員が納得してプロジェクトを進めていく必要があり時間がかかることもあります。
一方、ニューヨークは、今の支店は全員集めても40人しかいません。この40人という人数の少なさに良さがあります。月に1回はZoomで40人全員が集まるミーティングをします。いろいろなセクションの人たちを集めた5人くらいでミーティングをして思いついたアイディアも、誰かが「やりたい」といえば、すぐにチームを決めて始めることができます。やることの規模は日本本社に比べて小さいですが、やりたい人が自主的に提案をして、すぐに小さいチームを作れます。支店が持っているお金のなかで「この規模なら」「○ヶ月なら」とすぐに始動します。
ニューヨーク支店には、日本から来てる日本人やずっとアメリカにいる日本人、アメリカ育ち、メキシコ育ちなど、様々な国の出身の人がいて、いろいろなことがミックスされた環境です。意見がぶつかることもありますが、多様性であったり、多種多様な文化の組み合わせがあったりして面白いです。
ニューヨーク支店は自分でやりたいと思ったことがすぐに実現できる環境です。
れん(以下、レ):
多くの現地スタッフも一緒に働いている中で、文化の違いなども出てくると思いますが、それを乗り越える方法として、何か気をつけていることはありますか。
内:
日本の企業で働いていてもここはアメリカです。生まれた国に関わらずに最終的にアメリカ国籍を取っている人もいますし、生粋のアメリカ人も多いです。ですからアメリカの文化に従っている部分もあります。例えば、予定していた以上の時間を取られるのがきらいです。なので、部署のミーティングを行うときにも時間には特に気をつけます。「今日のミーティングは60分です。」「アジェンダは3つです。」と言うと、しっかり1時間の中で結論を出します。日本だと全員が納得する結論を導くために1時間の予定が1時間半になったりしますが、アメリカでは絶対にないです。時間に関することは特にニューヨークの特徴とも言われています。彼らは時間にきっちりしている人も多く、話すスピードも早いです。同じアメリカでも、西海岸の海辺の人たちの方が少しゆっくりして感じるかもしれませんね。便に運休や遅延が発生したイレギュラー時にも、お客さまに論理的に理由をしっかり説明しなくてはいけません。こちらでは謝罪よりも、理由やバックグラウンドをしっかりきっちり説明することが求められます。でも逆に、理由がしっかりしていれば納得していただけます。仕事をしている中でも「なぜ?」というのはよく聞かれます。こういったことからも、時間と論理性を大事にしていることがわかります。
さわ(以下、サ):
時間と論理性、私も大事にしていきたいと思いました。
レ:
ニューヨークに来て何に最初一番驚きましたか。
内:
貧富の差ですかね。日本で普通に生活しているとあまり感じる場面が少ないかもしれませんが、ニューヨークではマンハッタンにいけば超高層ビルがいっぱいあり、キラキラしたオフィスがたくさんあって、マンションなどのすごい建物がいっぱいあるドラマのような世界が広がっていますが、地下鉄で通勤しているときにはまた違ったことが見えてきます。ニューヨークの地下鉄は、今でこそ消毒して綺麗になっていますが、悲しいくらいホームレスの方が多いのが現実です。私はこれからどこの国で仕事をしても、現実に目を向けることが大事だと思っています。空港の入り口のところで生活している人もいたりして、街の中に光と影がくっきりあると感じました。
レ:
自分もニューヨークに行ったときに地下鉄の独特な匂いに困惑しました。日本の地下鉄と比べた時の違いにとても驚きましたね。
ー何が海外生活の魅力だと考えますか。
内:
一言でいうのなら自分の幅が広がることです。
最初に現地での生活を整えるまで、文化に慣れたり、住居を決めたりして数ヶ月は惑いもありますが、日本では考えられなかったようなことがたくさんあります。さっき言ったミーティングの時間を守ることや街で感じる貧富の差もそうですが、ニューヨークには電車で行ける範囲だけでも20カ所くらい美術館があります。来年にはクラシックバレエの劇場も新しくオープンするそうです。エンターテイメントは日本では見られないようなものがたくさん見られるので、自分の興味の幅も広がります。新しいことは自分の心や考え方を豊かにしたり、広げたり、柔軟にしたりしてくれますよ。多くの違いを前にして、「日本だったらこうなのに」などとは言っていられません。現地で生活を送る上でそんなことは通じないですから。
いろいろなものに対して、「これはそういうものなのだ」と幅広く受け入れられるようになることで海外での生活を楽しむことができます。
レ:
自分も留学を通して柔軟性を身につけることができましたし、留学先で困難を乗り越えた経験を日本でも活かせていると感じています。
ー逆に海外生活で困った点、ハプニングなどはありますか。
内:
幸い生活面で困ったことはあまりないです。これは会社のおかげで、家を決めるといった大事な契約などは支店の人たちが非常に手厚く支えてくれます。そういう意味でのトラブルなどは全然ないです。
困ったことというか悩んだこととして、2月末にニューヨークに来て、4月頭からどんどん街がロックダウンして行った状況のなかで支店の40人と親睦を深めるにはどうすればいいんだろうかと悩みました。せっかくニューヨークに来たのにメンバーに会えない状況が続き、自分のことを知ってもらうことも、相手を知ることもできませんでした。考えた末に、オンラインでコミュニケーションをとれば良いのではと思いました。オンライン上で40人全員一斉に話すとまとまらないので、セクションごとに全員の自己紹介とそのお仕事の魅力を発表してもらいました。コロナウイルスの影響で航空便がなかった時には週に1回行い、今では日本からの便が復活して忙しくなってきたので月に1回行っています。
サ:
日本航空のパイロットさんに話聞いたときにも、横も縦もつながりが強いとおっしゃっていて、今の内藤さんのお話からも、チーム全体で上手くまとまっているのだなと感じました。
内:
そうですね。チームのまとまりは強いと思います。ニューヨークに飛んでくるパイロットとも仲良くなりました。街がロックダウンしていた時期には、「生活大変でしょ」「困ってるでしょ」「食べ物持ってこようか」なんて聞いてくれました。日本航空の社員のまとまりはとても家族的で、苦労しているときや辛いときこそ、この会社でよかったなと感じます。
サ:
本当にJALさんは素敵な企業ですね。こういった話を聞くと将来JALに就職したいな、なんて内心思っています(笑)
レ:
ニューヨークで「こんなところに日本があった!」みたいなものはなにかありましたか。
内:
アメリカの人に、「日本ブランドの電化製品はいいよね」と言われます。こういった日本のものづくりの素晴らしさはいろいろなところで聞きます。日本の製品は壊れにくいとか、デザインも素敵で素晴らしいと言ってくれます。細かいところだと炊飯器が素晴らしいと言われますね。(笑)街中でもさまざまなところで日本企業の名前が出てきます。今は他国のメーカーが電化製品などでも参入してきていますが、それらよりも品質が良いので日本の製品を選ぶよ、という方は多いですね。それを聞くとすごく嬉しいですし、日本のものづくりを誇りに思います。こういったことからも日本への信頼が大きいことを改めて感じます。
レ:
サンフランシスコに行ったときに、日本のトイレメーカーのショールームを見つけました。留学の終盤にそれを見かけて、日本のトイレってそういえば綺麗で高機能だし、素敵だなと思いました。実際にアメリカ生活の中で見かけることはなかったですが、普及し始めているのかなと思うと嬉しくなりました。
内:
航空機内のトイレについているウォシュレットはよくお褒めの言葉をいただきます。日本の製品を取り入れている面でも日本の航空会社は素晴らしいよねと言われます。
サ:
確かにヨーロッパでもウォシュレットは見かけたことがないです。
ー最後に、読者にメッセージをお願いします。
中高生といった若い時には、感受性が高くさまざまなことを柔軟に吸収できます。そういった時期に留学することは、100%人生を豊かにすることができますし、人生を切り開くツールになります。自分自身を振り返っても、留学をしているときは楽しかったり、新しいことを知る喜びが大きかったりして、将来に役立つイメージはありませんでした。でも、日本ではできないことをやっているのだ、という感覚くらいで良いと思います。これが後に、いろいろなものを受け入れる力や、困難な状況を乗り越えられる強さ、たくましさになっていきます。留学によって人生が明るくなることは間違いないです。最近は内向き志向と言われがちですが、島国にこもっていてはもったいないです!
日本の良さを心に持ちつつ、コロナ禍が収束したら、いろいろなところに飛び出していって欲しいです。たくさんのことにチャレンジをしてほしいと心から思っています。
レ:
まだまだお仕事のこと、ニューヨーク生活のことについてお話を伺いたかったですが、インタビューはここで終了です。本日は短い時間でしたがありがとうございました。
サ:
ありがとうございました。
これでJAL NY支局勤務の内藤仁美さんに聞く「せかいを舞台に働くということ」は全編終了です。
世界を舞台に働くことに興味を持っていただけたでしょうか。
私たちは、日本企業の海外事業を支える現地支局勤務についてのお話から自分の将来について考えることができました。
(レン、さわ)