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地球観測衛星「だいち」シリーズがアツい!!せかい×宇宙?!~高校生、JAXA筑波宇宙センターに突撃する。~

#せかい部がついに………………

JAXA筑波宇宙センターにやってきました! 🚀🌎⭐️🔥
全長50mのH-Ⅱロケット(本物!)を前に
大興奮のゆうな、ののか。

ロケットのつもり笑

その中でも、今回は第一宇宙技術部門内の、
「地球観測研究センター」(EORC)におじゃまします〜!

……宇宙なのに、なんで地球?と思ったかも。
日々移り変わる地球をとらえるには、宇宙からの目が超重要!みたい。

「第一宇宙技術部門」では、JAXAが運用する地球観測衛星の開発・運用などを行っていますが、「地球観測研究センター」では観測データの解析や利用研究などを担っています。🛰️

「地球観測衛星」の活躍の場は、全世界。
しかも、海外との連携も重要らしい・・・!?

これは、せかい部が聞くっきゃない!


初号機から、陸域観測衛星「だいち」シリーズに関わり、JAXA内では ”Mr.だいち” と呼ばれることもあるという、田殿武雄さんにお話を伺います!

第一宇宙技術部門
地球観測研究センター 研究領域主幹
田殿武雄  TADONO Takeo

京都府出身。学生時代から衛星観測・リモートセンシングに関する研究に取り組み、NASDA(現JAXA)の地球観測研究センターに配属。主に、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)シリーズ衛星の校正・検証や利用研究に従事。衛星ミッションは立ち上げ、開発、打ち上げ、運用とそれぞれ苦労はありますが、最後まで残るのは観測データ。この価値をしっかりと示すことがひとつの目標。趣味はラグビーのテレビ観戦。

仕事場に案内してもらうと、
パソコンや衛星模型が並ぶ部屋へ!

天井からいろんな地球観測衛星の名前プレートがぶら下がっています。
 ”だいち”、”いぶき”、”しきさい”・・・

インタビュー前から、ワクワクで胸が爆発寸前笑



ゆうな(以下、ゆ)・ののか(以下、の)
本日はよろしくお願いします!

田殿さん
ようこそ!模型とかも持ってきちゃいました笑

さっそく、Mr.だいちこと田殿さんのレクチャーがスタート!

田殿さん
リモートセンシング、って聞いたことありますか?

 地理の授業で聞きました!
教科書の最初のページにあったような…

田殿さん お!それは嬉しい。

測りたいもの、「ターゲット」が
・なにか
・どんな状態か
を、直接手を触れないで調べる
この技術が、リモートセンシングです。

陸なら、森林・火山・災害の状況把握や土地の利用状況、
海なら、海面の水温・プランクトンの量・船がどのあたりにいるのか?
大気中も、雨がどこで降っているか・水蒸気やエアロゾル(空気中の微粒子)の分布……

などなど、知りたいことは山ほどありますよね。
これには計測器、つまりセンサーが必要。

そのセンサーを衛星に載っけて測ろう!というのが、つまりは人工衛星を使った
地球観測と呼ばれる分野です。

 おおお!この発想、めっちゃ面白い!】

田殿さん
じゃあ、宇宙から地球を見るメリットは何か?

①地球全体を
②一定の時間間隔で
③同じ精度で

観測できる、ということ。
この、場所によらず同じ正確さ、というのが重要なんです。

 上空からの観測なら、地上の条件に左右されないですね!

田殿さん
日本を測っても、アメリカを測っても、正確さが同じだから客観的な判断に使える。

田殿さん
つまり、我々が運用している地球観測衛星たちって、宇宙を飛ぶ計測器なんです。

一同 かっこいい🤩🔥

知りたい情報に合わせて、衛星やセンサーの特徴も色々。今宇宙で働いているのは、JAXAの地球観測衛星は合計6機。

今回のテーマの、大地を観る【だいち2号】や、
気候変動の観測に特化した【しきさい】、
温室効果ガスを観測できる【いぶき2号】など、
個性豊かなメンバーがたくさん!

田殿さんが、「いぶきちゃん」とインタビュー中ぽろり。
JAXA職員のみなさんの、地球観測衛星への愛を垣間見た気がしました。

初画像、奇跡の一枚

田殿さんが主に携わっているのは、陸域をメインに観測する「だいち」シリーズ衛星
2006年に打ち上げられた初号機は2011年に引退し、今は2号機がバリバリ活躍中です。

田殿さん
だいち初号機って、実はそれぞれ全く違う、
3つのセンサーを載っけていたんです。

その中の一つ、「プリズム」で撮った初画像が、これです。

©JAXA

一同 お〜〜〜!!富士山だ!

田殿さん
結構お気に入りです。一番好き。
この画像を作ったのが、実は僕なんですよ、徹夜して笑

5年くらいの運用期間の中で、
これだけ晴れた富士山って
他に1回くらいしか撮れていなくて。

奇跡の一枚です。

 「画像を作る」とは?

田殿さん
観測データって、要は0か1のデジタル信号。

情報として衛星から降りてくるのは、
キャッチした電磁波の強さです。

地上にいる我々人間が、
データを解析して初めて、こんなふうに
画像という形に落とし込めるんです。

 地図でよく見る衛星画像と
視点が全然違う・・・?立体的に見える!

田殿さん
これは3方向のデータを同時に取れるセンサーのおかげです。

ちょっと前方斜めに撮ると、山頂が前に倒れ込むし、後ろ向きに撮ると、今度は後ろ側に倒れ込みますよね。

この差を使って高さを割り出せる、と。
非常に特徴的なセンサーでした。

©JAXA

 人間の目の立体視みたいですね!

田殿さん
だいち初号機が集めたデータセットを
無償で公開しています。

海外に行って、山の中で「地図がない!」と
なったら、この立体データを地図がわりに使ってください笑


大地にも、精密検査が必要だ。

 今も上空で飛んでいる、「だいち2号」についても教えてください。

田殿さん
だいち2号がすごいのは、夜でも、天気が悪くても、関係なく観測できるところ。

左:光学写真は©JAXA 右:PALSARは ©JAXA、METI

田殿さん
この2つの写真をにらんでみて、どうですか?

 光学の方が、色も付いていて見慣れた写真らしく見えます。
右の方は、大地の凹凸がはっきりわかります!

 右には噴煙が写ってないです…!

田殿さん 100点!まさにそんな感じ!

右の方が、だいち2号も使っている
「Lバンド合成開口レーダー(以下SAR)」
でみた地球の様子です。

ふたりが指摘した差の理由は、
光学衛星が「太陽光の反射」を見ているのに対して、
SARでは「衛星自身が発した電波が、どう地面で跳ね返ってきたのか」をキャッチしているから。

だいち2号のレーダーは、
電波を自分から出すから
夜で真っ暗≒可視光が無い状況 でも関係なし。

しかも、レーダーは波長が長い「マイクロ波」を使っています。
これって、くもっていたり煙があったりしても、
透過して地面に届く波長なんです。

田殿さん 人間の目で見える光って、ごくごくわずかなんですよ。
マイクロ波を使えば、目に見えない光の情報も得られるのが最大の特長ですね。

大事なのは、衛星のデータを使うとき、何が知りたいのか
それに応じて、可視光とマイクロ波、それぞれの波長に見える世界を使いわけるわけです。

災害には昼も夜もないですから、だいち2号は大きな助けです。

電磁波の気持ちになる

雨だろうが夜だろうが、どんな時でも観測できる、超頼もしい「だいち2号」。
でも、なんで「ここが陸でここが川」とか、
「森はここ!」とか、見分けられるんでしょう・・・?

田殿さん
出した電波が、どれだけ跳ね返ってきたのか、
どんな状態で跳ね返ってきたのか。

これを調べることで、
ターゲットが地面なのか、人工物なのか
ツルツルなのか、ワサワサしてるのかまでわかっちゃう。

 どうやるんですか?!

田殿さん
例えば、たいてい水は表面が平らだから、
電波はあんまり拡散せず、反対側へ反射してしまう。
つまり、画像では暗く見えるんです。

じゃあ森みたいに凹凸がいっぱいあって、
ワサワサしている場所なら…?

 あちこちにぶつかって、偏波の向きも変わるんですか!

田殿さん そういうことです!

キャッチした電波の量だけではなく、
その状態までわかる「だいち2号」なら、
山のような大きな凹凸だけじゃなくて
地球の表面の「なめらかさやザラザラさ」まで観測できます!

田殿さん 
これを活用した例のひとつが、
熱帯雨林の森林変化伐採モニター」です。
赤い場所、これが期間中に森がなくなってしまった場所を示しています。

アマゾンなどの熱帯林では、違法伐採が問題になっています。
でも、あの広大な範囲を人が歩き回ってチェックするなんて無理な話。

実は僕も去年の9月にブラジルの現場にいったんですけど、行くだけでも、やはりほんとに大変でした。

そこで、「だいち2号」の観測データで、
森林に変化があった場所を特定し、事前にチェックポイントを絞り込んで、現地のチームのより効果的な取り締まりに役立ててもらっています。

実際に、赤い場所に行ってみたら
まさに伐採の真っ最中だった、ということもあったらしいですよ。

 環境問題への対応を、宇宙からサポートしているんですね!

JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム (JJ-FAST)


地球の「今」と「未来」をつなぐ

田殿さん
EORCの業務の一つは、衛星データの値づけや、
さらに精度をよくする「校正」という作業です。

大変、地味なんですけども。
衛星から送られてきた生データを、実際に使えるように、同じ指標で比較できるように整えるという、非常に重要な仕事です。

 お仕事の中で、海外と関わる場面はどんなものがありますか?

田殿さん
国内外の研究者と連携、つまりコラボして、
衛星データを研究に利用しています。

特に、気候変動への活用は大きいです。
観測というと、あくまで「現在どんな状態か」を
調べるものだと思うかもしれませんが、

コンピューター上で、
地球を再現したシミュレーションに入力する
正確な現在の状態を提供することで、未来の予測をしようと。

気候変動によって、洪水、干ばつなどの
異常気象が増える中、被害を最小限に抑える取り組みは必要不可欠です。

田殿さん
国際機関と連携して観測データを共有したり、
災害対応をしたりもしていますよ。

 月にトルコ・シリアで発生した地震を、
「だいち2号」も緊急観測されていましたよね!

(JJ-FAST:©JICA/JAXA)

田殿さん
得られた解析結果をみて、正直びびりました。
なにしろ、観測幅の70キロメートル(東京都の東西端から端くらい)に
ずれが収まりきっていない

「だいち」シリーズ衛星でこういった観測をずっとしてきましたけど、
これだけでっかい変動域が地表に現れているのは多分初めてです。

ずれも左右に約8メートル(学校の教室の幅くらい!)と、非常に大きい。

しましまが密集しているところが、
地面が大きく動いた場所を表します。
干渉縞といって、「だいち2号」のデータの分析方法の一つです。

©JAXA

今回は日本の衛星がトルコ・シリアを観測しましたが、逆に日本で災害が起きたときは、
そのとき近い場所にいる他の国の衛星に観測を要請したりもします。

 宇宙というスケール感だからこその、
地球規模の課題に取り組む社会貢献ですね! 

高校生へメッセージ

 大学の学部の名前を見ても
実際なにが学べるのかいまいちわからないのに、
高校までの学びだけで、その先の進路を決めなきゃいけない。

高校生の私はそういう不安を感じているのですが
田殿さんの進路選択について伺えますか?

田殿さん ぼく、高専出身なんですよ。
高専から、大学に編入したんですけど。

 運営メンバーのゆうたと同じですね!

田殿さん 進学するときは実はあまり何も考えてなかったですね、正直に言って笑

大学院で研究し続けたいと思ったきっかけは、
やっぱり周りの友達や、研究者とのコミュニケーションだったり、論文や教科書を読んだり。

常にいろんなものに興味を持って、いろんな話を聞いてみるという姿勢は、若い人には大事なんじゃないかと思います。

今でも変わらず大事なことです。

 興味が色々ありすぎて、焦ることも実はあったりするんですが、自分を決めつけず、いろんなところから学びとっていきたいです。

田殿さん やってみて、合わなければやり直せばいいんですよ。
そんな気持ちで飛び込んでみれば、大丈夫です。


自分で自分自身を決めつけてしまわないこと、
思わぬ場所で見つけた興味を、しっかりアンテナをはってキャッチすること。

なんだか人工衛星みたい…!😍🛰️

最後に、「だいち2号」の展示の前で
衛星ポーズでパチリ!

田殿さん、貴重なお話を
ありがとうございました!!


私たちが暮らす地球を、
宇宙から見守っている計測器こと、
「地球観測衛星」の話、いかがでしたか?

知れば知るほど、奥深い世界がありました。

日々、精密な観測を実現させ、
世界をよりよくしていくために不可欠な
正確なデータを整備されているJAXAの職員の方々の奮闘を感じたインタビューでした!

地球観測衛星は、運営メンバーのゆうなが
もともと興味を持っていた分野。
自分でも、「世界」と「宇宙」がこんなに関わってるなんて・・・!と、驚きました。

ここまで読んでくれたあなたが、気になっていること、興味があること。
実は、世界に繋がっているかも!!


引き続きせかい部は、みんながまだ知らない世界への扉を提供し続けます!
これからもこんな情報を知りたい!という方は、ぜひTwitterInstagramのフォロー、note記事への「スキ」をお願いします🙋‍♀️

(ゆうな)