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米国留学経験を活かし世界銀行で防災や気候変動をテーマに活躍する大倉瑶子さんを、#せかい部運営メンバーがインタビュー![せかいとつながる仕事 Vol.5]

 せかい部運営メンバーの美月、めい、まるこです!
今回の記事ではアメリカの大学と大学院への留学を経て現在は世界銀行でご活躍されている大倉瑶子さんに3人でインタビューに行ってきました!👀
 
大倉さんは大学卒業後、テレビ局で記者として活躍されたのち、あるきっかけで公共政策を学びにアメリカの大学院に進学されました。大学院卒業後は、NGO団体などでのお仕事を経験され、現在は世界銀行(※)で防災・気候変動についてのお仕事をされています。

※世界銀行(英語: World Bank)とは
貧困の撲滅と持続的な経済成長を進めるため、途上国の政府に対して、融資を中心に、知識共有や制度構築・人材育成、助言を提供する世界最大の国際開発金融機関です。189カ国が加盟しています。詳細はこちらの公式HP参照。

現在の勤務地でもある、パキスタンのフンザにて  

大倉さんの留学を通しての学びが現在のお仕事にどのように生かされているのか、世界銀行でのお仕事とはどんなものなのか、一緒にお話しを聞いていきましょう!
 
まずは大倉さんが高校生だったときのエピソードを聞いてみました。

今に影響を及ぼしている高校時代の経験はありますか?

副将として活動していたテニス部での経験です。
今の自分のチームワークに対する考え方や、皆がどうやって共通目標を持って取り組むのかなど、社会に出ても重要な考え方の基本はこの部活時代に培われたと思っています。
具体的には、決まったコートの時間を誰がどう使うのか、大会に出場できない人たちの練習時間はどうするのか。自由な運営をさせてくれる学校で、自分たちで全部決めるという方針だったので、副将としてみんなと話し合いを行いました。 顧問の先生に「テニススクールではなく、部活としてテニスをする意味が何かを考えてやりなさい」とアドバイスいただき、最終的に部内の共通目標を「みんなでお互いテニスがうまくなり、楽しむこと」と設定をしました。それを軸として、どうやったら大会に出場できる選手以外の人たちも積極的に部活動に取り組めるのか一生懸命考えました。チームワークとは何かという問いが、日々の練習の進め方に大きく影響したと思います。一つの目標に向かって、色々な立場の仲間たちをまとめた経験は今でもすごく生きています。

高校時代、テニス部の仲間と

 次に現在の国際開発の活動に携わられる前の、報道のお仕事について聞きました!

もともと報道に興味を持たれたきっかけは何ですか?

そもそも色々な人に会って話を聞くのがすごく好きでした。
大学時代、アメリカのUCLAへの留学したこともきっかけになりました。単位がもらえるということもあり、テレビ局でインターンをしました。留学は2008年から2009年にかけてしていたので、オバマ大統領が誕生した歴史的瞬間を取材する経験をしました。その時、その瞬間しかない出来事を自分の中で消化して、多くの人に伝える仕事は、とても面白いと思いました。
また、女性ファッション誌で留学の連載を持たせてもらい、いろいろな方から、自分の記事へフィードバックをもらえたのも面白くて。交換留学という貴重な経験を多くの人に共有して、留学という選択肢を考えるきっかけづくりに貢献することは、とてもやりがいがありました。
情報を大勢の人に伝えて、考えるきっかけをつくるということに、強い興味を持っていったのだと思います。

大倉様の過去のインタビューで、 “人に寄り添う”という視点を大切にされていると拝読しました。その点で、メディアでのお仕事を通して果たすことができたこと、果たせなかったために今に生きていることはありますか?

「人に寄り添う」という言葉は、2011年の震災直後に入社したテレビ局の上司から言われた言葉で、とても印象的でした。私が誰だか知らない方でも、テレビ局の人というだけで、普通は機会がないような方とも話させてもらえます。被災した方、被災地の首長(市長など、自治体の長のこと)、総理大臣などへの取材の機会をいただくことができました。
特に、災害の後は家族を亡くされた方も多いですし、津波の被害に遭われた様子をよく見ていたので、相手の経験を共有してもらうことは、重たいことだと感じていました。相手が自分を信頼して答えてくれている以上、その方が嫌がるようなかたちで情報が世の中に出てしまうことがないようにしたくて。なぜ取材させていただけたのかを理解しながら、しっかりアウトプットまで見届けることを大切にしていました。自分の立場や役割をしっかり自覚していることは、どんな仕事をする上でも、とても大事なことだなと思います。

日本のマスメディアに足りない点があるとすれば、どのようなところですか?

私の専門とする気候変動について言えば、「適応」と「緩和」という二つの大切な視点があります。気候危機への対策には、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と、気候変動の影響による被害を回避・軽減させる「適応」の2つがあるんですね。日本では「適応」に関する報道がまだ少ないと感じます。
 
例えば、英字メディアだと、もうこの5-6年は災害や異常気象があると、気候変動の影響と合わせて報道され、解説されることが多いです。私が今住んでいるパキスタンも去年、大洪水があって世界的なニュースになったのですが、気候変動の影響が注目ポイントでした。気候変動によって、気温や雨量がどう変わり、人々にどういう影響があり、どうすれば次の災害に備え、「適応」できるのか。さらに、気候変動や災害は、特に女性に大きな影響があり、「適応」にはジェンダーの視点が重要だとわかっています。現在は少しずつ情報も増えていると思いますが、日常的に特に英字で世界に流れているほどの情報を目にする機会はまだまだ少ないですね。

インタビューを行う#せかい部メンバー(奥)と大倉さん(手前)

次に現在のお仕事についてお聞きしました!

災害発生後に、“本当に必要とされている支援”と善意であっても“迷惑になりかねない支援”があると思います。どのように現場のニーズを知り、何が最も適切な支援かを見極めていますか?

まずは、対象となる人の話を直接聞くことーこれが一番です。そのほかにも、世界の様々な事例を見ることが大切です。例えば現金給付支援を例にとってみても、フィリピンの事例ですが、現金給付の対象家庭にとっては良い影響があったものの、生鮮食品の物価があがったことで、給付の対象外の家庭では栄養失調の状態の子どもが増えた、という論文を最近読みました。色々なプログラムの設計を考える際に、実は、全く初めてやることはそれほど多くなく、意外とどこかで似たことをやっていることがあるので、過去の成功例や失敗例から学び、しっかり情報収集、精査するようにしています。
 

 大学院進学前、卒業後、実際の現場、とフェーズが変わる中で、防災・気候変動政策へのイメージや分野のもつポテンシャルについて、考えは変わりましたか?

大学院に行く前はそこまで 全体像を見てはいなかったかもしれません。自分が実際知っている現場の状況に注目することはあっても、それより 大きい規模で体系的に考えることはなかったです。
大学院で学ぶ中で「防災」をさまざまな側面から考えることができました。特によかったのは、世界中から集まった学生とディスカッションをする機会が多く、自分もその場に貢献しながらとことん話し合えたことです。本当に世界中から学生が集まっている大学院だったので、やっぱり議論をするにしてもいろんな考えがあります。
実際の現場においては、正解は必ずしも一つではない公共政策において、何を正解とするかを自分で決めなくてはいけないという大変さがあります。大学院で多様な視点から体系的に捉えることができるようになり、頭の筋トレができた経験が、今、現場で生きています。
 

 留学や転職など、知らない環境の一員になるときに、いつも心にとめていることはありますか?

やっぱり質問をすることですかね。「分からない」って言う、知りたいことがあれば人に話を聞きに行くのが大事なのかなと思っています。
ここ7、8年は海外で仕事をしているので、空きがでたポジションに転職すれば基本的に即戦力として働けるのは当然、という環境です。一番いいパフォーマンスをするためには色々な新しい考え方が必要です。だからこそ、周りにどう思われるかを気にせず、分からないことを「分からない」といって周りの人からアイデアを得ることは必要だと思っています。最初だから聞けることは沢山あると思うので、特に最初は遠慮していてはダメなときですね。 一年経ってから「そういえば、あれってどういうことなんですか」と聞くと「知らないの!?」みたいになることも結構あると思うので。

インタビューを行う#せかい部メンバー(奥)と大倉さん(手前)

 パキスタンでの災害対策をする上で、宗教への配慮として気にかけていることはありますか?

そうですね。パキスタンはイスラム教がマジョリティの国です。特に私の担当には、厳格に教義を実践する地域もあるので、立ち入る時は身だしなみなどを整えます。
 
また、女性は知らない男性と話さないということもあるので、防災プロジェクトに当たっても、女性の声をしっかり汲み上げるための仕組みがあることが大切です。トップにみんな男性が入ると、女性がなかなか話せないので、意見が全然上がってこなくなってしまう。女性が外を一人で歩けないという地域もあるので、そういったところで避難をするときはすごく困りますよね。やはりそこは地域の理解が必要です。
 
地域の中心となるモスクや学校が避難を呼びかけることで、多くの人が動くということもあります。日本であったら神社やお寺が地域社会の中心となるところが、パキスタンの場合はモスクなので、そのような施設との良いコミュケーションはすごく大事だと思います。
宗教をはじめ、社会的な配慮、状況にあった防災というのはとても大事です。どうしたら防災や災害対策を効果的に行えるのか。相手の宗教や社会の慣習に寄り添いながら、そのコンテクストに合わせてステークホルダーと話し合いながら、より良い方向に進んでいくように対話を続けることが必要です。

 将来やりたいことがまだわからない#せかい部員も多いと思います。そんな#せかい部員へ、メッセージをお願いします。

わからないことを楽しむこと、色々な人に会いに行くことが大切です。
わからないということは、選択肢や可能性がたくさんある、良いことだと思います。
でもやっぱり、その状況を楽しむとはいえ、不安はあると思うんですね。だから足を動かし色々な人の話を聞くとよいです。携帯で見た情報だけじゃなくて、自分で会いたいと思った人に連絡して会いに行くべきだと思います。
例えば私は高校時代、テニス部に香取慎吾さんが大好きな友達がいて。香取さんが当時、テレビの仮装大賞という番組の司会者だったので、みんなで出演することに挑戦し、なんと出演者の香取さんに会えたのです。まだ高校生は生きている時間が短いから、成功体験も少ないかもしれませんが、だからこそ勇気をだしてチャレンジすることが大切だと思います。

 何かに挑戦するとなると、周りの目を気にしてしまうのですが、どうしたらよいでしょう?

気にしないマインドを作るのが大事だと思います。それでいうと留学経験は意味が大きい気がします。ある社会の常識が他では常識ではないことを知るきっかけになりますよね。日本の高校の中で他の人の言うことが気になるのもわかりますが、世界に出ると悩みのスケールとか、人間関係の複雑さとかが違いすぎて、そんなのどうでもよくなります。自分の価値観の相対性を広げられるのですね。ひとつの評価軸に囚われない環境を自分でどう創り上げていくのかが大事だと思います。そして、それは自分の支えになると思います。頑張ってください!
 
インタビューは以上です。
大倉さん、一時帰国のお忙しい中、インタビューへの御協力ありがとうございました!

~インタビューをした3人の高校生メンバーたちの感想~
わたしは大倉さんが何事にも挑戦してみるということを大切にしながら、違う環境でも自分自身をその場でどう活かすことができるのか考え続ける姿勢にとても刺激を受けました!(美月)
 
わたしは、大倉さんが大切にされている「人に寄り添う」ということにとても感銘を受けました。報道、公共政策、現場での活動など、行動する規模や範囲が変わっても、このマインドをずっと持っていらっしゃることを知ることができ、自分にとっても様々なことを考えて行動するきっかけとなりました!(めい)
 
異なる環境の中でも、相手との対話を大切にする大倉さんの姿勢に心を打たれました。どのフィールドでも環境に応じた社会的配慮をおこない活動する大倉さんのように、わたしも世界に飛び出した時、リスペクトを忘れずに行動していきたいです!(まるこ)

最後までこの記事を読んでいただき、ありがとうございました!

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